安斎都の探偵ファイル ―雪に閉ざされた孤島のペンションで消えたPの足取りを追え編―

「Pさーん、Pさーん?都ですよー、遊びに来ましたよー」
ドアをノックする。返事はない。かれこれ3分ほどこうしている。
Pさんは嫌な顔してもなんだかんだ言って付き合ってくれるので、居留守ということはないはず。
トイレくらいならそろそろ戻ってきてもいいはずだし、他にこんな夜中に部屋を留守にする用事があるとは思えない。
となると残された可能性は…事件。
ゴクリ。唾を飲み込む。
「ええと、こういうときはまずドアノブをガチャガチャして……あれ?」
ドアに鍵が掛かっていない。
ドアガチャガチャから騒ぎを聞きつけた他の人が出てきて突き破ったりマスターキー持ってきてもらったりとかではないらしい。
「中の様子は、と……」
ドアを少しだけ開けて、中を窺う。真ん中にPさんが倒れていて、慌てて飛び込んだら死角から犯人の不意打ちを受けて気絶、目を覚ましたら犯人扱いの流れは避けたい。
部屋の中は電気が点いており、怪しいものを見逃す心配はなかった。そもそも怪しいものは何もなかった。人の気配もしない。目に付くのは備え付けのデスクの上のノートPCだけ。
安心したようなちょっとがっかりしたような気持ちで部屋の中に入る。部屋の外で待つのも中で待つのも一緒だし、そもそも鍵をかけ忘れたPさんが悪いのだ。
部屋に入ると、興味は自然とノートPCに向いた。仕事の途中で離れたというのなら、突然部屋を出るような用事が出来たことになる。
画面を見ると、ただのログイン画面だった。パスワードの入力を求められている。
「PCを点けたところで席を外す用事が出来た……?」
と、ふとノートPCの横に置かれたメモに気が付く。


都へ

7777 444 4 66
66 666 22 555
777 33 444 4
444 3 33 66


「フフ……フフフ……!」
不敵な笑み。Pさんの意図が見えた。
「つまりこれはこの名探偵安斎都への挑戦状ということですね……!いいでしょう、受けて立ちましょう……!今夜も、真実は都のものだッ!」