安斎都と思い出の鍵 その1
ついったーに投げたやつのまとめ。
「私の名前は安斎都。デビューしたばかりの探偵アイドルです」
「アイドルであり、同時に探偵でもある私のところには、様々な事件が飛び込んできます」
「今回は、その中でも特に奇妙な事件のお話をしましょう…」
「これを調べて欲しい」
目の前に置かれたのは何かの鍵束。
「これは…鍵束ですね」
「そうだ」
答えたのはプロデューサー。私をこの事務所に連れてきた当の本人です。
「これだけでは調べるも何も…一体何の鍵なんです?」
「これはな、思い出の鍵なんだ」
「思い出の鍵…?蘭子ちゃん風の言い回しですか?」
「いや、確かにこれは『思い出の鍵』なんだ。そうとしか言えない」
「ふうん…なんですか、これを使うと忘れた記憶を思い出せるとでも言うんですか?」
「当たらずと言えども遠からずだな」
「…そんな馬鹿な」
「馬鹿な話だと思うだろう。だが本当だ。俺はこの鍵で見たこともない思い出を見た。一度や二度じゃない」
「……」
鍵を見る。なんの変哲もない鍵束。これにそんな不思議な力が…?
「Pさんの妄想という線は」
「考慮したが思い出の話が通じたことがある。それはない。
というわけで、だ。この得体の知れない鍵が一体なんなのか、その調査を頼みたい」
「この鍵以外に情報は」
「ない」
「はあ…時間がかかるかも知れませんけど、いいですか?」
「構わん。どうせ放っておいても何も分からないんだ、何かわかったらそれだけで僥倖だ」
君こと安斎都は、こうして謎の鍵束…通称「思い出の鍵」の調査を引き受けた。さて、これからどうする?
— かわうそ (@A24_mitsugishi) 2016年8月15日
…対峙する二人の人影が見える。追う者と追われる者。
赤い髪が月明かりに照らされて浮かび上がる。…あれは私だ。じゃあ私が追っているのは誰?
大きな月を背後に、風にはためくマントと茶色の髪。その顔は逆光になって見えない。
彼女は私に何か語りかけると、軽い身のこなしで屋根から屋根へと飛び移っていく。
私はそれを懸命に追うけれど、追いつくどころか引き離されていき、やがて彼女を見失ってしまう…
部屋に響いた金属音で我に返った。足元には鍵が転がっている。
息を吐きながら、ゆっくりとした動作でそれを拾い上げる。
見たことのない思い出を見ると言うから、子供の頃の記憶でも見るだろうと思っていたが違った。
妄想と笑い飛ばすにはリアリティがありすぎた。髪を撫でていく夜風の感覚さえはっきりと思い出せる。
この件は深入りしてはいけないような気がする…。
さて、Pから預かった思い出の鍵を実際に使ってみた安斎都こと君は、探偵として誰かを追いかけている光景を見た。君にはもちろんそんな記憶はない。さて、これからどうする?
— かわうそ (@A24_mitsugishi) 2016年8月19日