新説日本昔話


昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。
おばあさんが洗濯をしていると、川の上流からどんぶらこっこ、どんぶらこっこと


とても大きなが流れてきました。
おばあさんはこのを持ち帰り、おじいさんと一緒に調べてみることにしました。
を一目見たおじいさんは大層気に入り、『機械なら叩けば直る』と自慢の手刀を垂直に叩き込みました。
するとどうでしょう、中から小さな男の子が出てきたではありませんか!
二人はこの子を太郎と名付け、大切に育てました。
やがて太郎も大きくなり、おじいさんは太郎に告げました。
太郎や。ちょっと鬼が島へ行って鬼を退治してきておくれ」
おじいさんの無茶振りにさすがの太郎も苦笑い。ですが家主の権力には逆らえず、渋々旅に出ることにしました。
おばあさんはとっておきのきび団子を太郎に持たせ、おじいさんと共に彼の旅立ちを見送りました。


太郎が歩いていると、腹を空かせた犬が話しかけてきました。
太郎さん、太郎さん。お腰に付けたきび団子、一つ私にくださいな」


優しい太郎は、きび団子を一つ犬にあげました。
その調子でサルとキジもお供に引きつれ、意気揚々と鬼が島へ向かったのでした。





――その頃鬼が島では――
「なあ、本当に……これで良かったのか?」
「これしか無かったのよ。鬼を退治した英雄ともなれば、あの子の未来は約束されたようなもの。少なくともここで一生を終えるような惨めな生活は無いでしょう」
「……そうか。そうだな」
「倒されるのは私一人でもいいのよ?」
「馬ッ鹿、女房置いて逃げる旦那が居るかよ」
頬を赤らめそっぽを向く女。
「……楽しかったなあ」
「……そうね」
「あの子の未来に、幸多からんことを」



太郎が二匹の鬼を倒したあと、どうなったのかはまた別のお話。



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